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連載 リンゴ小説 第3話 モノクロサーモン

 投稿者:MECHA GGG  投稿日:2008年10月22日(水)22時32分50秒
返信・引用 編集済
  バー ことり

今夜もここで飲んでいる。

すると、ドアが、開いて、ゼラチンさんが入ってきた。

ど、どうしたんですか、、

寒い...
マスター
なんでもいい、温まるものをくれ。

D76じゃなくていいんですか

やめてくれ、そんなもの、
棄ててくれ!

ウィスキーのお湯割を渡すと、ゼラチンさんは、震える手でグラスを持ち、飲み干した。

ああ、やっぱり、ホンモノの酒はいい。

しかし、ゼラチンさん、どうなっさたんですか、すっかり、凍えていらっしゃる。
それに、新聞紙にくるまって、お髭からはツララが下がっていますが...

異様なゼラチンさんだが、今の様子は、昨日店を出て行った時よりもはるかに異様だ。
裸の体に、新聞紙を巻いて、ぶるぶる震えながら、体には、氷がついている。
その上、もう、現像液は要らないと言っているが...

マスター
もう、やめたよ、モノクロなんて...

どうなさったんですか?

いや、昨日、フィルムの水洗をしようと川に入ったが、そこで、婚姻色を身にまとった、綺麗なメス鮭が目に入ったわけよ。
それで、つい、ふらふらと、そのメス鮭によっていったら、鮭のやなに落ちてしまったんだ。
どぼん、とな。
そして、鮭と一緒に選別場に連れて行かれて、そこで、俺は他のオス鮭と一緒に、精子を搾り取られて、それから、観光客のつかみ取りの生簀に入れられちまったんだ。

しかし、切ないものよなぁ。
鮭になった気持ちは...
一生をかけて、海から登り、命の最後の時にハネムーンのために、故郷の川を目
指した。
ところが、人間の仕掛けた罠に落ちて、どぼぉおおおん、だ。
メスは、腹を割かれて、卵を取られ、オスは、精子を搾り取られて、それから、生簀だ。

そ、、そうですか...
しかし、人間で鮭の気持ちが分かった人もお客さんくらいでしょう。
貴重な体験をなさいましたねぇ。

それが、それだけじゃあ、すまねえのよ。

生簀に入れれたオス鮭は、観光客につかみ取りされるんだが、なにしろ、でかい鮭だ、つかみ取りをしても大暴れする。
ところが、漁協の漁師が、棍棒で頭をぼか!とやって、一撃で殺しちまうんだ。

えええ?
まさか、その、ゼラチンさんも、棍棒で!?

そうだ。
よっぽど、俺の、D76シェイクダンスが、鮭の動きに似ているのだろう、誰も、俺が人間だとは気づかない。
そのまま、生簀で捕まって、棍棒で ごん! よ。
気が付いたら、新聞紙に巻かれて、持ち帰りの用の発泡スチロールと氷のセットに詰められて、車のトランクにいたってわけよ。

しかし、鮭の人生も切ないものよなぁ。
一生をかけて、ハネムーンに出かけて、故郷の川で結婚だって時に、腹を割かれ
たり、頭をぼか、っとやられたり...
なんのための人生なんだ。

カウンターで話を聞いていたが、すさまじい話だ。
人間が、遡上した鮭と間違えられるものなのだろうか?
それに、鮭の一生を人生と言って、わが身のことのように嘆いているが。

マスターは、ゼラチンさんがネット上で、写真なんて残らないほうがいいと言っていたと話していた。
過去の幸せな自分の記録なんてものが残っていると、惨めな今の自分が際立ってしまうから、写真なんて残らないほうがいいと書いていたそうだ。
彼の半生に何があったかは知らないが、今、彼は、故郷に戻りながらも、棍棒でごん!とされる鮭に自分の人生を重ね合わせてみているのだろう…

確かに最近、この故郷の町では、村おこしの一環として、鮭祭りというのをやっ
ている。
オスの鮭は、生簀に入れて、観光客に掴みどらせるが、確か、1,000円で売ってい
た。
持ち帰り用の発泡スチロールの箱と氷が500円。
すると、この男は、鮭と同じ、発泡スチロールとセットで1,500円の値打ちになっちまったわけだ。

ねえ、お客さん。
良かったじゃないですか。
逃げてきて。
そのまま、気が付かずに、買った人の家にいっていたら、今頃、秋鮭のムニエル、塩焼き、チャンちゃん焼き、クリームシチュー、石狩鍋、鮭ぞうすい、鮭茶漬け...

じゅる、じゅるぅ、じゅるぅ、、
よ、よだれが、、

お、おい、マスター
なんだか、変な目で見るなよ...
なんだ、そ、その包丁は...
や、やめろ、俺は人間だ。
鮭じゃねーぞ...

さて、今日も、飲みすぎないうちに、帰ることにしようか。

マスター、置いとくよ。

バー ことりのスモークサーモン。
こいつは、ちょっとしたもんだ。
ちょっと、すっぱい味がするんだが、なぜか、鮭の身の色が、白と黒なんだ。
だが、美味い。
なんともいえない、郷愁をそそる、セピアの味がする。

不思議な鮭だねえ、どこで捕れるんだい、って、聞いてもマスターは教えてくれ
ない。

まあ、この町は、だれも、オードブルの原料が何かなんてつまらないことは気にしない。

俺は、知っている。見てしまったからな。
しかし、もう、モノクロ狂信者は居ない。
ことりのスモークサーモンも、もう食えないかな。

いや、まてよ。
ゼラチンさん、精子を搾り取られたんだった。
そうか、ゼラチンさんの子供たちが、また、この川を上ってくる。
その時に、美味い、モノクロ鮭が採れるってわけだ。
シェイク、シェイク、シェイク、妙な泳ぎ方をしている鮭を見たら、ゼラチンさんの子供たちだ。

この町の鮭。
こいつは、最後の執念でモノクロ写真を残そうとした男の遺伝子が宿っている。
知らない町で鮭を頼んだら、くれぐれも、色には注意して欲しい。
知らずに食べると、現像液が飲みたくなるかもしれない。

http://j-camera.net/index.php

 
 

連載リンゴ小説 第2話 カクテル D76

 投稿者:MECHA GGG  投稿日:2008年10月22日(水)22時31分32秒
返信・引用 編集済
  バー小鳥

今夜もここに来ている。
しかし、この町にもいろんな人間が流れてきているらしい。

今夜も風変わりな客が来た。

マスター
いつものやつ。

はい、原液ですね?

違う、希釈だ!

は、失礼しました。

原液?希釈?
ストレート、水割りの新しい言い方なんだろうか?

手馴れた手つきでシェーカーに注いでいる液体は何なのだろうか?
しかも変わったシェーカーだ。
ステンレス製なんだろうが、グラスに注ぐときにマスターが突っ込んでいるのは、あれは、温度計だ…

どうぞ。

ああ、ありがとう。

おお、なんだか、一気に飲み干しているが…

すると、急に客は立ち上がり、腰を激しく振ってダンスを始めた。

そ、そうだ、この調子だ。
攪拌はうまくいっているぞ…
よし、そうだ、そ、、そおだぁ、、

うぅ、今日も、だめだ…
温度が違いすぎる…

温度?

違う、濃度が違う。

だめだ、だめだ、反応速度が速い!

マスター

お代りだ!

マスターは今度は、シェークもせずに、ボトルを取り出すと、すぐに、グラスに注いだ。

急げ!だめだ、急いでくれええええええ

客は絶叫している。

グラスになみなみと注がれた液体を、一気にあおる客。

よし、、止まった…

ふぅ、、今日も駄目だ…

マスター
いつものやつ。

はい、どうぞ。

ぐび、ぐび、ぐび、、、

ふぅ、、これでいいか…

あとは、川に行くだけだな。

ご馳走様。

シェイク、シェイク、シェイク!

客は、また、不思議なリズムで腰を振りながら、店を出て行った。

マスター、俺はこの町で生まれたんだが、ああいう変わった客は見たことが無い。
ありゃ、新しい飲み方なのかい?
変わった飲み方だが。
3杯飲む間に、腰を振ったり、ストップウォッチを見たり。
そして、仕上げは川に飛び込むとか言っていたが…

ああ、あのお客さんですか。
いや、ちと、訳ありなんですよ。
ほかのお客さんの話をここでするのは、タブーなんですが、、

ほら、まあ、お客さんも、カメラマンがだからご存知でしょう?
あの、モノクロ禁止法。

ああ、あの臭くて環境破壊をする古典的な趣味だな。
フィルムが撲滅された後でも、狂った信者が密造現像液を作っているといううわさは聞くが、あんな臭いものを隠れてやっていても見つかるだろう?

それが、いるんですよ、見つからない方法で、現像する人が。

え、まさか、、、

ええ、その、まさかなんですよ…

あ、、あれは、つまり、人間現像タンクか!

ええ、あの方、ゼラチンさん、っておっしゃって、東京からいらっしゃったらしんですが、急に、D76とかいうカクテルがほしいって言い出して。
なんだか分からなかったのですが、切羽詰った様子で、3本のボトルを置いて、おやじ、頼む、ボトルをキープしてくれ。そして、俺に3杯だけ、飲ませてくれ!
すべてはゲージツのためだ!

っておっしゃって…

うーん、恐ろしい話だ…
普通なら、そんな異常者はつまみ出すところだ。

しかし、これがこの町のいいところだ。
どんな異常なよそ者でも受け入れてしまうふところの深さがある。

ところで、あの、そうゼラチンさんだが、川に行くと言っていたが…

ええ、あの後、裸になって、川に入って、水洗するんですよ…
口を大きく開けて、その、胃の中のフィルムを…

そうか、昨日、鮭の遡上を見ていたときに、妙な魚が混じっていると思ったが。
この町の川にやっと鮭が戻ってきたんだが、違う種類の魚も東京から流れてきたようだ。

http://j-camera.net/index.php

 

連載 リンゴ小説 第1話 鮭とりんご

 投稿者:MECHA GGG  投稿日:2008年10月22日(水)22時30分28秒
返信・引用 編集済
  太平洋岸の秋は鮭の遡上とともに始まる。
20年ぶりに訪れる故郷の町に、鮭が上る頃、あの女もやってきた。

妙に小奇麗になっちまったこの街には、場末なんて言葉の似合う通りは無いが、それでも、駅前から少し離れた小さなバーで、その女と会った。
バー 「ことり」、に、婚姻色をまとった女が現れると、そのあでやかな横じまに店の誰もが、縦じまを際立たせた。

リンゴ、久しぶりだな。
パリへ行ってたそうじゃないか。
何も言わずに行ってしまって、ミノルが泣いてたぜ。

私、ペンタックス嫌いなの。
小型軽量って好みじゃないのよ

カウンターの向こうにいる女の子が声をかけてきた。

あんた、ダンディね。

ダンディ?
どういう意味だい?

なに言ってんのよ、ダンディって言ったら、カサブランカってことよ?

訳が分からんが、まあ、これが、この街のいいところだ。
誰もが、つまらないことに目くじらを立てない。

ねえ、おにいさん、何してる人なのよ?

俺かい?
カメラマンさ。

かっこいい!
有名なのね?

ああ、ちょっとは名が売れてるらしいな。

どんなの撮るの?
ヌード専門でしょ。
だって、ダンディだもの!

ははは、今度、撮ってやろうか。

しかし、こんないい女連れの俺に、気安く話しかけてくるとは、まあ、それが、この街のいいところではあるんだが…

しかし、バー 「ことり」は、いつから、こんな場末のスナックになっちまったんだ?
せっかく、リンゴとしんみり、縦じましようと思ったんだが…

リンゴは、どんな顔をしてこの会話を聞いているんだろう。

リンゴ、ナニを飲む?


リンゴ?
どこいっちまったんだい?

ダンディなお兄さん、
どうしたよの?
リンゴ、リンゴ、ってリンゴが食べたいの?

カウンターには、そうだ、俺が買ってきた青森リンゴの籠が乗っていた。


場末の酒場で、女の子が聞いた
お客さん、子供のころの夢って何?
あったでしょう?
男の子なら野球の選手とか?

いや、どうだったかなぁ。
思い出せないんだ。
いや、思い出すには、余計なことを知りすぎたんだと思うよ。

君は?

私?
私、歌手になること。

へぇ、すごいね。
どうしてやめちゃったの?

やめてないわよ。
昼間は歌ってるのよ。

へえ、すごいね。
夜じゃなくて、昼?

そうよ、TVに出るの。
CATVだけどね。
ギャラなんて出ないのよ。
打ち合わせだけでも、数時間、歌うのは3分だけ。
でも、交通費が5千円くらい出るの。
でも、昼間がそんなのばかりで働けないでしょ、だから、ここに来るの。

そうなんだ、たった3分間のために頑張っているんだね。

そうだ、思い出した、俺の夢は、3分間でもいいから、ウルトラマンになることだった。
正義のために戦うのだ。
しかし、と、俺は思った。
正義って何なのだろう?

http://j-camera.net/index.php

 

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